2014/07/19

工藤直子さんの詩

こどものころにみた空は
                   工藤直子

ひとはみな
みえないポケットに
こどものころに みた 空の ひとひらを
ハンカチのように おりたたんで
入れているんじゃなかろうか

そして
あおむいて あくびして
目が ぱちくりしたときやなんかに
はらりと ハンカチが ひろがり

そこから
あの日の風や ひかりが
こぼれてくるんじゃなかろうか

「こどものじかん」というのは
「人間」のじかんを
はるかに 超えて ひろがっているようにおもう
生まれるまえからあって
死んだあとまで つづいているようにおもう



あいたくて

            工藤直子

 
あいたくて
だれかに あいたくて
なにかに あいたくて
生まれてきた──
そんな気がするのだけれど

それが だれなのか なになのか
あえるのは いつなのか──
おつかいの とちゅうで
迷ってしまった子どもみたい
とほうに くれている


それでも 手のなかに
みえないことづけを
にぎりしめているような気がするから
それを手わたさなくちゃ
だから

あいたくて



ねがいごと 

          たんぽぽはるか

あいたくて

あいたくて
あいたくて
あいたくて

 ・・・

きょうも
わたげを
とばします



おれはかまきり 

          かまきりりゅうじ

おう なつだぜ

おれは げんきだぜ
あまり ちかよるな
おれの こころも かまも
どきどきするほど
ひかってるぜ

おう あついぜ

おれは がんばるぜ
もえる ひをあびて
かまを ふりかざす すがた
わくわくするほど

きまってるぜ

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