2015/02/05

『点子ちゃんとアントン』


ユニークで元気いっぱいの点子ちゃんと、
母親想いで勇敢なアントンの友情のお話。

自分の子どもが、こんな友情を育んでくれたらなぁ、
と願わずにはいられない。
それくらい、素敵な友情。

この小説は不思議なつくりになっていて、
各章の最後には、
ケストナーによる「立ち止まって考えたこと」という
面白いコーナーがあって、
ケストナーが本に書く事柄を立ち止まって考えている。
そしてそのコーナーで、
ケストナーは二人の友情を称え、彼らのようになって欲しいと、
この物語を読む少年少女に呼びかけている。

 ぼくは、みんなひとりひとりが、いい友だちにめぐまれるよう、願っている。そして、みんなひとりひとりが、友だちの知らないところで、その友だちのためにひと肌脱ぐめぐりあわせにめぐまれるよう、願っている。みんなには、ひとをしあわせにすることが、どんなにしあわせかを、知る人になってほしいのだ。


友情だけではない。
この物語がケストナーによって書かれた時代を考えると、
「どんな大人になって欲しいか」について、
彼の願いが込められた作品なのだということがわかる。
ケストナーは、あとがきでこう言っている。

 みんなは、エーミールやアントンのようになろうって、決心してくれたかな?エーミールやアントンが好きなら、この子たちのように、骨身をおしまない子になってくれるかな?きちんとした子になってくれるかな?勇敢で正直な子になってくれるかな?
 そうなったら、ぼくにはなによりもすばらしいごほうびだ。なぜなら、エーミールやアントンや、それからこの子たちに似たすべての子たちは、いつかきっと、世の中の役に立つおとなになるからだ。ぼくたちが必要とするようなおとなになるからだ。

自分の子どもに読んで欲しいと思う本ではあるけれど、
それよりもまず、私自身が折に触れて読み直したい。

子どもの頃のことを忘れてしまい、
大人の価値観を子どもに押し付ける大人。
忙しさにかまけて、
子どもの心をかまうことを忘れてしまっているう大人。
自分のエゴのために、
子どもの純粋さを利用する大人。

そんな大人に、なっていないか??


追記:
『点子ちゃんとアントン』を初めて知ったのは映画だった。
映画は小説の現代版という様相。
あと、私は母親なので、どうしても点子ママが気になってしまい、
小説のなかでは最後まで彼女に共感を持てなかった
ところが映画のなかでは点子ちゃんに心動かされて、
少し素敵ママになっている
(家を空け過ぎだった理由も描かれている)。
そのあたりが個人的にはストレスレス。
監督が女性だから、そこら辺を丁寧に解釈して描いてくれたのかな。
映画も小説と同じく、あったかほのぼのハッピーエンド。
後味の良い映画。
点子ちゃんの最後の台詞もいい。こちらも胸がいっぱいになる。
『ロッタちゃん』の映画の雰囲気が好きな人とか、
はまると思う。
とにかく私は小説と同じくらい映画も好きだなぁ。この作品。

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